【目的】様々な加齢関連疾患の発症や病態悪化に対し老化細胞の関与が強く示唆されており、特発性肺線維症の肺でも老化細胞が多く観察されている。我々の以前の研究においても抗がん剤ブレオマイシン腹腔内反復投与肺線維症モデルマウスの肺で肺胞上皮細胞とマクロファージの細胞老化を確認しているが、それぞれの細胞の老化が線維化に及ぼす影響は明らかになっていない。本研究では、細胞老化誘導因子であるp16をマクロファージ特異的にノックアウトしたマウスを用い、肺線維化におけるマクロファージの老化の関与を検討した。
【方法】p16-floxマウスとLysM-Creマウス(マクロファージ特異的Creマウス)を交配し、マクロファージ特異的p16ノックアウトマウスを作出した。作出したマウスに4週間ブレオマイシン(2回/週、35 mg/kg body weight)を腹腔内投与することにより肺線維症モデルマウスを作製し、肺摘出および気管支肺胞洗浄液(BALF)の回収を行った。肺線維化の評価は、肺組織切片を用いたSirius Red染色とBALFを用いた可溶性コラーゲン定量、細胞数カウントおよびタンパク定量により行った。
【結果および考察】ブレオマイシン投与により野生型のマウスの肺は、Sirius Red染色によるコラーゲン蓄積が観察され、BALFにおいても可溶性コラーゲン、細胞数およびタンパク量の増加が見られた。マクロファージ特異的p16ノックアウトマウスにおいてもこれらの所見は認められ、野生型マウスと比べて差が見られなかった。今後、肺における線維化関連因子の遺伝子発現やタンパク発現について検討する予定である。