【目的】アレルゲン免疫療法は、抗原に対する免疫寛容を誘導する治療法であり、その効果発現機序の一つとして、interleukin (IL)-5産生細胞であるTh2細胞ならびに2型自然リンパ球(ILC2)の減少が報告されてきた。エクソソームは、細胞が分泌する膜小胞の一種であり、宿主細胞由来のmiRNAなどを含有することから、それを受容した細胞の機能を変化させる。しかし、アレルゲン免疫療法の効果発現におけるエクソソームの役割は明らかでない。本研究では、アレルゲン免疫療法の1つである皮下免疫療法(SCIT)により喘息反応が抑制されたマウスの血清よりエクソソームを単離し、ILC2の炎症性応答に対する本エクソソームの効果を検証した。
【方法】卵白アルブミン(OVA)感作BALB/cマウスにOVA溶液を3回皮下投与することでSCITを行い、その後、OVA溶液を気管内投与することで反応惹起を行った。最終の反応惹起後、肺におけるIL-5産生、肺内の好酸球数ならびに気道過敏性を、それぞれELISA法、Diff-Quik染色法ならびにforced oscillation technique法により解析した。さらに、血清を回収し、total exosome isolation kitを用いてエクソソームを単離した。反応惹起後のマウス肺よりILC2(Lineage- CD45+ CD90.2+ ICOS+ ST2+)をソーティングし、エクソソーム(2×10-7〜2×10-5 g/ml)の存在下に72時間培養した。培養後、上清中IL-5濃度をELISA法により測定した。
【結果】(1)SCITを行ったマウスにおいては、肺におけるIL-5の産生、肺への好酸球浸潤、ならびに気道過敏性が有意に抑制された。(2)喘息マウス肺におけるIL-5産生細胞を解析したところ、ILC2のIL-5産生量は、Th2細胞のそれと比較して顕著に多かった。(3)SCITを行ったマウス由来の血清エクソソーム(2×10-5 g/ml)存在下においてILC2を培養すると、IL-5産生が有意に減少した。
【結論】SCITを行うことで血中を循環するエクソソームのフェノタイプが変化し、そのエクソソームがILC2のIL-5産生を抑制した。今後、SCITにより変化したエクソソームのフェノタイプを詳細に明らかにすることは、アレルゲン免疫療法の新規メカニズムの解明につながると考えられる。