【背景と目的】終末糖化産物(Advanced glycation endproducts, AGEs)とは,還元糖とアミノ基を有する分子が非酵素的に結合することによって生じる分子群である.過去に我々は,AGEsの作用メカニズムについて解析を行うなかで,AGEsが生体内の機能性分子と相互作用することにより,相手の分子の機能を変化させるメカニズムが存在する可能性を見出した.そこで,AGEs化した担体を用いて生体組織よりAGEsと結合する分子の探索を試みたところ,多くの細胞種に共通して発現する分子AGE-BP2(仮称)を見出した.これまでの検討によりAGE-BP2は,細胞の損傷に伴い細胞外に放出され,炎症反応を引き起こすダメージ関連分子パターン(Damage-associated molecular patterns, DAMPs)と総称される分子と類似した作用をもつ可能性が示唆されている.本研究において我々はAGE-BP2の作用をより詳細に検討することを目的として,以下の検討を行った.
【方法】タグ配列を付加したリコンビナントAGE-BP2とHigh mobility group box-1(HMGB1)の発現系を構築し,タグ配列を用いたアフィニティー精製によりリコンビナント分子を調製した.これらのリコンビナント分子をRAW264.7細胞に与え,細胞応答の変化を検討した.
【結果と考察】細胞を起炎分子,代表的なDAMPsであるHMGB1およびAGE-BP2により同時に刺激したところ,起炎分子とHMGB1によって誘導される炎症反応がAGE-BP2により抑制されることが示唆された.この結果は,AGE-BP2がDAMPsによる炎症反応の誘導に影響を与える作用をもつ分子である可能性を示唆している.