[目的] 抗血小板剤の脳梗塞再発予防効果を裏付ける薬理試験として、脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP) における脳卒中発症後の治療効果を比較検討した。
[方法] SHRSPの脳卒中初発日(前肢持上げ、運動抑制、過敏性亢進などの神経症状発現日)よりPDE3阻害剤(K-134、シロスタゾール)またはP2P12阻害剤(クロピドグレル)を経口投与し、脳卒中初発日からの生存日数、神経症状スコア、脳病変などに対する影響を検討した(各群10例)。
[結果] K-134(1日2回30, 100 mg/kg)は対照群に比し有意な生存日数の延長を認め (110.7 ± 17.5, 112.5 ± 26.5 vs. 75.4 ± 29.5 days, P < 0.01)、その効果は神経症状の軽減、脳血管病変の発症抑制、脳病変面積の縮小ならびに脳重量の減少などの薬理作用によって裏付けられた。一方、シロスタゾール(1日2回300 mg/kg)投与でも同様な効果を認めたが、平均生存日数はK-134に比較して約10日間短縮した。他方、クロピドグレル(1日1回3, 10 mg/kg)は対照群に比較して生存日数を延長させたが、脳血管病変の発症率においては差が認められず、逆に大出血塊が散見され脳病変面積では対照群に比較し増加傾向を示した。このような脳出血はK-134ならびにシロスタゾールでは観察されず、クロピドグレル特有の作用と考えられた。
[総括] これまでPDE3阻害剤のSHRSPの生存期間に対する影響はシロスタゾールを脳卒中発症前から投与することにより評価されてきたが、有意な生存期間延長効果は報告されていなかった。本研究において我々は脳卒中初発日から酵素選択的かつ強力なPDE3阻害剤であるK-134の投与を開始することにより、生存期間延長効果や神経症状の軽減効果を認めるとともに、クロピドグレルに比べ低い脳出血リスクを示すことができた。