私たちは2016年にショウガのヘキサン抽出物がRAW264.7細胞の破骨細胞への分化を阻害することを報告したが(Ito et al., Biosci Biotechnol Bichem. 2016;80:779-785)、その有効成分は不明であった。今回、このヘキサン抽出物の分画を行い、LC/MS、培養細胞・ゼブラフィッシュを用いた解析の結果、10-gingerolを同定したので報告する。
 ショウガヘキサン抽出物からシリカゲルクロマトグラフィーを用いて10個の画分を調製し、RAW264.7細胞を用いた試験系で評価、破骨細胞分化阻害作用を認めた画分を決定した。それらのHPLCにおけるピークをLC/MSにて解析した結果、gingerol類が想定された。RAW264.7細胞に加え、プレドニゾロン誘導による骨粗しょう症モデルゼブラフィッシュにおける再生鱗の評価系も用いて、各gingerolを試験した結果、10-gingerolに強力な破骨細胞分化阻害作用を認めた。私たちはさらに、この10-gingerolの作用機序を、ゼブラフィッシュ鱗再生過程・遺伝子発現プロファイル・酵素活性への影響の3点から解析し、「Nfatc1の核内移行阻害による分化阻害」・「CTSK活性阻害による破骨細胞機能抑制」という2つの作用メカニズムを明らかにした(Zang et al., Front Cell Dev Biol. 2021;9:588093)。