C3-1
H2S産生酵素cystathionine-β-synthaseの阻害薬はボルテゾミブ耐性を獲得した多発性骨髄腫細胞の生存・増殖を抑制する
〇関口 富美子1、福島 志歩1、森口 晴香1、平本 志於里1、田中 宏和2、芦田 隆司2、松村 到2、川畑 篤史1
Fumiko Sekiguchi1, Yukiho Fukushima1, Haruka Moriguchi1, Shiori Hiramoto1, Hirokazu Tanaka2, Ryuji Ashida2, Itaru Matsumura2, Atsufumi Kawabata1
1近畿大・薬・病態薬理、2近畿大・医・血液・膠原病内科
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H2Sは、生体内においてcystathionine-γ-lyase(CSE)、cystathionine-β-synthase(CBS)または3-mercaptopyruvate sulfurtransferase(3-MST)によりL-cysteineから産生される。本研究では、多発性骨髄腫(MM)におけるH2Sの役割を解明して新たな治療法を検討するため、ヒトMM由来KMS-11細胞およびプロテアソーム阻害薬ボルテゾミブ(BTZ)に対する耐性を獲得したKMS-11/BTZ細胞の生存におよぼすH2S産生酵素阻害の影響を調べた。生細胞数はMTT法またはcalcein-AM法で、タンパク質発現量はWestern blotで測定した。BTZは、KMS-11細胞では10-1000 nM、KMS-11/BTZ細胞では100-1000 nMで濃度依存性に細胞数を減少させた。両細胞において、H2S供与体のNa2SとGYY4173は細胞数を僅かに増加させたが、CSE阻害薬DL-propargylglycine(PPG)は 1-3 mMで部分的に、CBS阻害薬aminooxyacetic acid(AOAA)は0.1-1 mMで顕著に細胞数を減少させた。なお、3-MST阻害薬の両細胞における効果は僅かであった。KMS-11/BTZ細胞はBTZ 10 nM存在下でも生存していたが、PPGおよびAOAAにより細胞数が減少し、GYY4173添加によりこの細胞数減少がある程度抑制された。また、既存医薬品でCBS阻害活性を有することが報告されている芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ阻害薬のbenserazideは、0.03 mM以上でKMS-11、KMS-11/BTZ両細胞の細胞数を著しく減少させた。一方、KMS-11細胞において、BTZ 10 nMを24時間作用させるとCBSの発現量が劇的に増加したが、CSEと3-MSTの発現量は変化しなかった。以上より、KMS-11およびKMS-11/BTZ細胞の生存・増殖は主にCBSにより産生されるH2Sにより促進的に調節されており、benserazideを含むCBS阻害薬を、BTZ耐性を獲得したMMの治療に応用できる可能性が示唆された。
C3-2
新規AGEs結合分子AGE-BP2がDAMPsの作用に与える影響の解析
〇渡邊 政博1、豊村 隆男1、和氣 秀徳2、西中 崇2、逢坂 大樹3、王 登莉3、高橋 英夫2、西堀 正洋3、森 秀治1
Masahiro Watanabe1, Takao Toyomura1, Hidenori Wake2, Takashi Nishinaka2, Daiki Oosaka3, Dengli Wang3, Hideo Takahashi2, Masahiro Nishibori3, Shuji Mori1
1就実大・薬、2近畿大・医・薬理、3岡山大・院医歯薬・薬理
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【背景と目的】終末糖化産物(Advanced glycation endproducts, AGEs)とは,還元糖とアミノ基を有する分子が非酵素的に結合することによって生じる分子群である.過去に我々は,AGEsの作用メカニズムについて解析を行うなかで,AGEsが生体内の機能性分子と相互作用することにより,相手の分子の機能を変化させるメカニズムが存在する可能性を見出した.そこで,AGEs化した担体を用いて生体組織よりAGEsと結合する分子の探索を試みたところ,多くの細胞種に共通して発現する分子AGE-BP2(仮称)を見出した.これまでの検討によりAGE-BP2は,細胞の損傷に伴い細胞外に放出され,炎症反応を引き起こすダメージ関連分子パターン(Damage-associated molecular patterns, DAMPs)と総称される分子と類似した作用をもつ可能性が示唆されている.本研究において我々はAGE-BP2の作用をより詳細に検討することを目的として,以下の検討を行った.
【方法】タグ配列を付加したリコンビナントAGE-BP2とHigh mobility group box-1(HMGB1)の発現系を構築し,タグ配列を用いたアフィニティー精製によりリコンビナント分子を調製した.これらのリコンビナント分子をRAW264.7細胞に与え,細胞応答の変化を検討した.
【結果と考察】細胞を起炎分子,代表的なDAMPsであるHMGB1およびAGE-BP2により同時に刺激したところ,起炎分子とHMGB1によって誘導される炎症反応がAGE-BP2により抑制されることが示唆された.この結果は,AGE-BP2がDAMPsによる炎症反応の誘導に影響を与える作用をもつ分子である可能性を示唆している.
C3-3
抗原抗体反応による肥満細胞からのケミカルメディエーター遊離に対する新規ビベンジル化合物Perrottetin D及びジアセチル誘導体の抑制機序
〇浅井 遥1、宮坂 真由1、初川 香穂1、村上 名誠1、武田 尚子1、加藤 紘一1,2、長島 史裕3、福石 信之1
Haruka Asai1, Mayu Miyasaka1, Kaho Hatsukawa1, Nanami Murakami1, Naoko Takeda1, Koichi Kato1,2, Fumihiro Nagashima3, Nobuyuki Fukuishi1
1金城学院大・薬、2名城大・薬、3第一薬科大
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【背景】以前の検討により、オオケビラゴケから抽出された新規ビベンジル化合物であるPerrottetin D (PerD)及びPerrottetin Dのジアセチル誘導体 (Ac-PerD)は肥満細胞の抗原抗体反応による脱顆粒やヒスタミン遊離、サイトカイン産生を抑制することが明らかとなった。今回はPerD及びAc-PerDの抗原抗体反応による肥満細胞からのケミカルメディエーター遊離に対する抑制機序の検討を行った。
【方法】C57BL/6の骨髄細胞より、常法によって骨髄由来肥満細胞(BMMC)を作成した。BMMCをIgEで感作後PerD, Ac-PerDを作用させ、FITC標識した抗IgE抗体を使用してBMMCに結合しているIgE量を測定した。また、感作後のBMMCにPerD, Ac-PerDを作用させたのち抗原を添加し、Syk, Gab2, p38, PLCγ2のリン酸化をWestern Blot法で検討した。さらに、PerD及びAc-PerDとFynとの結合についてドッキングシミュレーションを用いて計算を行なった。
【結果・考察】IgEの受容体であるFcεRIへの刺激はFynなどのSrcキナーゼ活性化を経てSykやGab2、p38、PLCγ2などのリン酸化により伝達され、脱顆粒やヒスタミン遊離、サイトカイン産生につながる。薬物を作用させていないBMMCとPerDまたはAc-PerDを作用させたBMMCでは、細胞表面に結合したIgE量に有意な差はなかったが、薬物を作用させていないBMMCと比較して、PerDまたはAc-PerDを作用させたBMMCでは、Fynの下流に存在するSykのリン酸化が抑制されていた。そこで、PerDまたはAc-PerDのFynに対する影響をドッキングシミュレーションで検討したところ、PerD、Ac-PerDともFynのキナーゼポケットに結合する可能性が示された。また、Ac-PerDを作用させたBMMCではSykだけでなくGab2、p38、PLCγ2のリン酸化も抑制されていた。以前の検討において、PerDを作用させたBMMCは脱顆粒及びヒスタミン遊離を抑制し、Ac-PerDを作用させたBMMCは脱顆粒やヒスタミン遊離に加え、サイトカイン産生も抑制されていた。したがって、PerDはFynを阻害することでSykのリン酸化を抑制し、脱顆粒やヒスタミン遊離を抑制する可能性が示唆された。また、Ac-PerD はFyn阻害によるSykのリン酸化抑制に加え、さらにGab2のリン酸化を抑制することでその下流にあるp38、PLCγ2のリン酸化を抑制し、脱顆粒やヒスタミン遊離だけでなくサイトカイン産生も抑制している可能性が示唆された。
C3-4
アレルゲン免疫療法を行ったマウス由来の血清エクソソームによる2型自然リンパ球からのIL-5産生の抑制
〇松田 将也、清水 聖登、木下 雅稀、大森 美侑、北谷 和之、奈邉 健
Masaya Matsuda, Seito Shimizu, Masaki Kinoshita, Miyu Omori, Kazuyuki Kitatani, Takeshi Nabe
摂南大・薬
【目的】アレルゲン免疫療法は、抗原に対する免疫寛容を誘導する治療法であり、その効果発現機序の一つとして、interleukin (IL)-5産生細胞であるTh2細胞ならびに2型自然リンパ球(ILC2)の減少が報告されてきた。エクソソームは、細胞が分泌する膜小胞の一種であり、宿主細胞由来のmiRNAなどを含有することから、それを受容した細胞の機能を変化させる。しかし、アレルゲン免疫療法の効果発現におけるエクソソームの役割は明らかでない。本研究では、アレルゲン免疫療法の1つである皮下免疫療法(SCIT)により喘息反応が抑制されたマウスの血清よりエクソソームを単離し、ILC2の炎症性応答に対する本エクソソームの効果を検証した。
【方法】卵白アルブミン(OVA)感作BALB/cマウスにOVA溶液を3回皮下投与することでSCITを行い、その後、OVA溶液を気管内投与することで反応惹起を行った。最終の反応惹起後、肺におけるIL-5産生、肺内の好酸球数ならびに気道過敏性を、それぞれELISA法、Diff-Quik染色法ならびにforced oscillation technique法により解析した。さらに、血清を回収し、total exosome isolation kitを用いてエクソソームを単離した。反応惹起後のマウス肺よりILC2(Lineage- CD45+ CD90.2+ ICOS+ ST2+)をソーティングし、エクソソーム(2×10-7〜2×10-5 g/ml)の存在下に72時間培養した。培養後、上清中IL-5濃度をELISA法により測定した。
【結果】(1)SCITを行ったマウスにおいては、肺におけるIL-5の産生、肺への好酸球浸潤、ならびに気道過敏性が有意に抑制された。(2)喘息マウス肺におけるIL-5産生細胞を解析したところ、ILC2のIL-5産生量は、Th2細胞のそれと比較して顕著に多かった。(3)SCITを行ったマウス由来の血清エクソソーム(2×10-5 g/ml)存在下においてILC2を培養すると、IL-5産生が有意に減少した。
【結論】SCITを行うことで血中を循環するエクソソームのフェノタイプが変化し、そのエクソソームがILC2のIL-5産生を抑制した。今後、SCITにより変化したエクソソームのフェノタイプを詳細に明らかにすることは、アレルゲン免疫療法の新規メカニズムの解明につながると考えられる。
C3-5
Tリンパ球刺激に伴うGPR3発現上昇とNR4A2発現誘導に与える影響
〇田中 茂、白榊 紘子、原田 佳奈、秀 和泉、酒井 規雄
Shigeru Tanaka, Hiroko Shiraki, Kana Harada, Izumi Hide, Norio Sakai
広島大
【背景と目的】G-protein-coupled receptor 3 (GPR3)は神経細胞や卵母細胞に豊富に発現し、リガンド非存在下にGαs活性化能を有するG蛋白共役型受容体である。一方、我々はGPR3が神経細胞のみならず肥満細胞やTリンパ球刺激後早期に発現誘導することを新たに見出した。本研究ではDNAマイクロアレーを用いて、Tリンパ球刺激に伴うGPR3発現上昇が影響を及ぼす遺伝子発現を検索し、Tリンパ球におけるGPR3の役割と機能について検討した。
【方法】Tリンパ球にはJurkat細胞(ヒト急性T細胞性白血病細胞由来)を使用した。細胞刺激にはphorbol 12-myristate 13-acetate and ionomycin(PMA)100 nMとイオノマイシン1 μg/mlを使用した。Tリンパ球刺激によるGPR3発現をsiRNAで抑制し、刺激6時間後におけるコントロールとの差異遺伝子をDNAマイクロアレー(Affymetrix GeneChip®)にて解析した。
【結果】Tリンパ球をPMA+イオノマイシンで刺激すると、刺激2-8時間後でGPR3 mRNA発現上昇を認めた。次に、Tリンパ球刺激に伴うGPR3発現をsiRNAで抑制し、有意なGPR3発現抑制が観察された刺激6時間後での差異遺伝子発現解析を行った。その結果、GPR3発現抑制に伴って発現減少する遺伝子として、転写因子NR4A2(nurr1)を同定した。Real-time RT-PCRを用いた発現解析により、Tリンパ球刺激に伴うGPR3発現誘導と、NR4A2発現には正の相関性を認めた。さらに、GPR3発現によるNR4A2発現上昇は、PKC、PKA、MAPキナーゼ阻害剤で有意に抑制されたが、PI3キナーゼ阻害剤では抑制されなかった。さらにNR4Aの転写活性はGPR3発現と正の相関性を認めた。
【結論】Tリンパ球細胞刺激後早期に発現上昇するGPR3は、NR4A2発現やその後のプロモーター活性を上昇させ、Tリンパ球機能を修飾する可能性が示唆された。